

監修:八丁堀さとうクリニック副院長 佐藤 杏月 先生
妊婦の糖代謝異常「妊娠糖尿病」とは

妊娠糖尿病とは、妊娠中に血糖値の調節がうまくできなくなる糖代謝異常のこと。妊娠中に見つかるため戸惑う妊婦さんもいるようです。まずは妊娠糖尿病について紹介します。
妊娠中の糖質代謝異常のこと
妊娠糖尿病とは妊娠中に発見または発症した糖代謝異常で、血糖値が上がりやすくなったり、上昇した血糖値が適切な範囲まで下がりにくくなったりする状態のこと。通常はすい臓で作られるインスリンが血糖値の上昇を防ぎます。しかし、妊娠中はホルモンの影響でインスリンの働きが抑えられ、血糖値が上昇しやすい傾向になります。ほとんどの場合、妊婦さんに自覚症状はなく、妊婦検診で発見されるケースが多いようです。
母体や赤ちゃんへの影響を防ぐため血糖値のコントロールが必要
血糖値が高い状態が続くと、妊娠高血圧症候群を合併し、糖尿病になりやすくなります。その場合、お腹の赤ちゃんも高血糖状態になるため、早産や難産、生まれた後の急激な低血糖症、新生児呼吸窮迫症候群発症などのリスクが高まります。母体や赤ちゃんのリスクを抑えるためにも、適切な食事による血糖値のコントロールが必要です。また、体重を増やし過ぎないことも大切。妊娠前のBMIが標準の人で+11~12kgを目安としましょう。
妊婦におすすめの血糖値を下げる食べ物一覧

妊娠糖尿病には、血糖値を下げる食べ物を積極的に摂るのがおすすめです。血糖値を下げる食べ物を、毎日の食事に摂り入れてみてください。
1.根菜類
根菜類は、血糖値対策に効果的なミネラルや水溶性食物繊維が多く含まれています。
■おすすめの根菜類
種類 | 期待できる効果 |
タマネギ | インスリンの分泌を促すインクレチンを増やす |
長ネギ | 糖質の代謝を助けてくれるビタミンB1の吸収率を高める |
ゴボウ | 血糖値を下げコレステロールを減らす |
2.葉物野菜
葉物野菜は、食物繊維やミネラルを多く含んでいます。
■おすすめの葉野菜
種類 | 期待できる効果 |
ケール | 食後の血糖値上昇を抑える |
小松菜 | 葉酸が含まれているため糖の代謝を促進する |
3.イモ類
イモの種類によって血糖値への影響は異なります。サツマイモや里芋、山芋は食後の血糖値を上昇させやすいのですが、ミネラルや食物繊維を多く含むという血糖値に良い特性もあるので適量なら問題ありません。
■おすすめのイモ類
種類 | 期待できる効果 |
サツマイモ | 蒸して調理すると血糖値が上昇しにくい |
里芋 | 血糖値を下げるビタミンB1、マグネシウム、亜鉛を含む |
コープの里芋はこちら
4.ネバネバ野菜
食物繊維の一種であるネバネバ成分が腸内で糖の吸収を抑え、血糖値を急上昇しにくくします。
■おすすめのネバネバ野菜
種類 | 期待できる効果 |
オクラ | 血糖値の上昇を抑える |
モロヘイヤ | 血糖値やコレステロールを下げる |
メカブ | 血糖値を下げるフコイダンを含む
|
コープのめかぶはこちら
5.穀物
雑穀には食物繊維が豊富に含まれているため、白米を雑穀米に変えるのも良いでしょう。雑穀から1日8.1g以上の食物繊維を補うと、糖尿病の発症リスクを減らせると言われています。
■おすすめの穀類
種類 | 期待できる効果 |
大麦 | 糖尿病や生活習慣病の予防効果が期待できる |
小麦全粒粉 | 普通の小麦粉よりも食物繊維とマグネシウムは4倍以上、ビタミンB1、カリウム、鉄は3倍以上摂れる |
玄米 | 精米された白米よりも食物繊維が2倍以上摂れる |
コープの雑穀はこちら
6.豆類
食物繊維を多く含む豆類は、良質のたんぱく質が摂れる食材です。ご飯やパンを豆類に置き換えるのもおすすめ。
■おすすめの豆類
種類 | 期待できる効果 |
大豆 | 食物繊維やカルシウムが豊富。また、大豆に含まれるイソフラボンは脂肪の蓄積を抑える |
納豆 | 大豆より1.5倍もの水溶性食物繊維を含み、粘り気が強いほど血糖値の上昇を抑える |
コープの納豆はこちら
7.果物
果物は食物繊維やミネラルを多く含むので皮ごと食べるのがおすすめです。ジュースやスムージーは食物繊維が減少して満腹感を得られにくく、吸収が早いぶん急激に血糖値が上がる原因になるので注意しましょう。
■おすすめの果物
種類 | 期待できる効果 |
バナナ | 血糖値を下げるカリウムが豊富で、インスリンの効果を高める |
ブルーベリー | 食物繊維やアントシアニンが豊富で、糖尿病網膜症を予防 |
パパイヤ | インスリンの分泌を助ける水溶性食物繊維、脂肪やたんぱく質を分解してくれる酵素を含む |
コープのブルーベリーはこちら
妊婦の血糖値を下げる食事管理のコツ

妊娠糖尿病と診断された場合は病院での栄養指導を参考に、血糖値の上がりにくい食事を心がけましょう。
一日の摂取カロリーを知る
一日に必要なカロリーを知り、摂取カロリーがオーバーしないように注意しましょう。ただし、極端にカロリーを減らしすぎると、おなかの赤ちゃんに必要な栄養が不足してしまう可能性があります。
一般的な摂取カロリーの目安
標準体重(kg)×身体活動量+付加量(kcal)
標準体重(kg)×身体活動量+付加量(kcal)
身体活動量の目安
座っていることが多い25~30・普通30~35・動いていることが多い35~
座っていることが多い25~30・普通30~35・動いていることが多い35~
付加量の目安
妊娠初期+50kcal・妊娠中期+250kcal・妊娠後期+450kcal
妊娠初期+50kcal・妊娠中期+250kcal・妊娠後期+450kcal
バランスの良い食事を摂る
血糖値を安定させるには、バランスの良い食事を心がけましょう。妊娠糖尿病の妊婦さんは、一日の摂取カロリーを炭水化物を50~60%、たんぱく質を20%以上、脂質を20~30%の割合で摂るのが目安です。主食・主菜・副菜の組み合わせに、果物や乳製品、油を適度に摂ってバランスの良いメニューに。
血糖値を下げるための妊婦の運動

血糖値のコントロールには、食事だけではなく適度な運動も効果的です。妊娠時期を考慮して適切に運動を行えば、妊娠中の運動不足を防ぎ、体重管理もできるでしょう。
適切な時期に適切な運動量で行う
妊娠の時期に応じて適切な運動量で行うことが大切です。妊娠初期は無理をせず、ウォーキングなど軽いものを。安定期となる妊娠中期からは、軽い運動やエクササイズ、散歩などがおすすめ。糖尿病や妊娠高血圧症候群の予防につながります。
またおなかが大きくなる妊娠後期は、体を動かすのがおっくうになりやすい時期です。出産に向けて体力や筋力が低下しないように、軽い筋トレやマタニティエクササイズなどを行うようにしましょう。
妊娠中に運動を行う際の注意点
体に無理のない程度の運動に留め、安定期でもジャンプをしたり、お腹を圧迫したりするような運動は避けます。またお腹が大きい妊娠後期は足元が見えづらく、体のバランスも変化しているので、転ばないよう動作に気を付けましょう。
運動中や運動後は水分補給を忘れないように。また運動中や運動後にお腹のハリ、おりものや出血など体に変化を感じたら、かかりつけの病院を受診してください。
血糖値を下げる食べ物を取り入れて妊婦の体調管理をしよう

妊婦の糖代謝異常である妊娠糖尿病は、食事や運動などで予防できる可能性があります。血糖値が高くても、特に食べてはいけない食べ物はありません。赤ちゃんの成長に必要な栄養が摂れ、血糖値の上がりにくい食事をすることが大切です。血糖値を下げる食べ物を取り入れながら、バランスの取れた食事と適度な運動で体調管理を続けましょう。
宮城・福島のコープ宅配はこちら
日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。
3人の子供の子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医の主人とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。
日本産婦人科学会専門医
医学博士