【医師監修】妊婦は「生卵」NG?ママと赤ちゃんへの影響、他の生食材についても解説
監修:八丁堀さとうクリニック副院長  佐藤 杏月 先生

監修:八丁堀さとうクリニック副院長 佐藤 杏月 先生

日本医科大学卒。
日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。

3人の子供の子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医の主人とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。

日本産婦人科学会専門医
医学博士

妊婦が生卵を避けるべきと言われるのはなぜ?

器にたくさん盛られた卵
妊娠中は妊娠前よりも菌に対する抵抗力が弱まっているため、生卵は避けた方が良いと言われています。始めに、妊婦が生卵を避けた方が良い理由と生卵に潜むリスクを解説します。

免疫機能が低下しているため

妊娠中は、妊娠前と比べて免疫機能が低下しています。そのため妊娠前には大丈夫だった食材でも、妊娠中に食べると食中毒を引き起こすことがあります。生卵は、妊娠中に食べると食中毒を起こしやすい食材のひとつです。食べたからといって必ずしも食中毒を起こすわけではありませんが、リスクを考えるとなるべく避けることをおすすめします。

生卵を避けた方が良いと言われる理由

生卵には、食中毒の原因となるサルモネラ菌という病原菌が潜んでいる可能性があります。本来サルモネラ菌は鶏の腸に生息していますが、産み落とす際に卵にも付着します。日本では出荷時に卵の表面の洗浄や殺菌をしているので、菌が付着している確率は低いです。しかし、まれに表面にサルモネラ菌が残存していたり、卵が育つ過程で内部まで入り込んでしまったりする可能性もあります。サルモネラ菌は、少量でも食中毒を起こす可能性があるため、注意が必要です。
そのため、すき焼きにつけたり、卵かけご飯にしたりするのも控えた方が良いでしょう。もしどうしても食べたくなったら、別の食材で代用するのがおすすめです。例えば、すき焼きの割り下に大根おろしや梅ソースを加える、とろろと出汁を混ぜてとろろかけご飯にする、などの方法があります。

半熟卵や温泉卵も気を付けて

サルモネラ菌による食中毒を防ぐには、卵を加熱するのが最も有効とされています。ただし加熱してあるといっても、半熟卵や温泉卵は、中までしっかり火が通っていない可能性があるので避けた方が安心です。サルモネラ菌を死滅させるには、卵の中心温度を75度で1分以上加熱する必要があります。スクランブルエッグなども半生状態で食べないように気を付けましょう。

妊婦が生卵を食べることで起こりうる影響

ソファに座ってお腹を押さえる女性
生卵に付いたサルモネラ菌は、食中毒を発症させる原因です。ここでは、妊婦が生卵を食べることで起こりうる影響について、ママと赤ちゃんそれぞれ解説します。

ママへの影響

先述の通り、妊娠中に生卵を食べると食中毒にかかるリスクが高まります。サルモネラ菌による食中毒の主な症状は、激しい腹痛・下痢・嘔吐・38~40度の発熱で、特に高熱を伴うことが多いとされています。潜伏期間は6~72時間なので、食べてすぐに症状が現れるわけではありません。
さらに激しい下痢が続くと脱水症状になったり、子宮収縮による早産や流産につながったりするおそれがあるとも言われています。重症化すると意識障害やけいれんを引き起こすこともあるので軽視できません。

赤ちゃんへの影響

かつては妊娠中に生卵を食べると、赤ちゃんが食物アレルギーになると言われていましたが、「食物アレルギー診療ガイドライン2016」では否定されています。現代では特定の食べ物を避けることの方が、栄養バランスの偏りが生じてしまうと危惧されています。ただし、妊娠中に何かしらの重篤な症状に陥ることにより、妊娠経過に影響が出る可能性までは否定できません。なるべくリスクを減らしながら、バランス良く取り入れていきましょう。
みやぎ生協では、食の安心・安全を守る取り組みをしています。

妊婦が生卵を扱うときに注意すべき4つのポイント

生卵を購入するとき、調理に使用するときは、ここで紹介するポイントを意識すれば食中毒にかかるリスクを減らせます。妊婦が生卵を扱うときに注意が必要なポイントを4つ紹介します。

①新鮮なものを選ぶ

スーパーで卵を選ぶ女性
卵は時間が経つほど菌が増えます。特にヒビ割れた殻の部分から菌が増殖していきます。そのためスーパーで購入する際には、なるべく殻にヒビが入っていない新鮮なものを選びましょう。もし持ち帰る際にヒビ割れてしまった場合は、妊婦が食べるのを避けるか、しっかり加熱してから食べるのがおすすめです。

②購入後は冷蔵庫で保管する

スーパーでは常温で売られていることが多い卵ですが、温度が高いと菌が増えやすくなります。家に持ち帰った後は、速やかに10度以下の冷蔵で保管するようにしましょう。その際、温度変化の激しいドアポケットは避け、冷蔵庫の奥にしまうとより安心です。

③手・調理器具はその都度洗う

キッチンで手洗いする女性の手
サルモネラ菌が卵の中にまで入り込んでいる場合、殻を洗っただけでは除去できず、手や調理器具に菌が付着してしまうおそれがあります。そのため、手や調理器具はその都度洗うことが大事です。うっかり生卵を入れた器で他の調理を始めたり、生卵が付いたお皿に生で食べる食材を入れてしまったりしないよう気を付けましょう。
またサルモネラ菌はアルコールに弱いとされているので、手洗い後にはアルコールをすり込む、調理器具は使う前にアルコール殺菌をするとさらにリスクを減らせます。

④殻を割ったらすぐに調理して食べる

卵は殻から出した状態の方が菌が増殖しやすいので、できるだけ食べる直前に卵を割り、すぐに加熱調理するのが望ましいです。割ってから一日置いた卵を加熱して食べ、食中毒を起こした例もあるので、余っても取り置きするのは控えましょう。

生卵以外にも!妊婦が気を付けるべき食材

生卵以外にも、妊婦が食べるのを控えた方が良いとされる食材がいくつかあります。妊婦が気を付けるべき食材とその原因について紹介します。

生肉・生魚・生野菜

生の鶏肉と野菜
生肉(特に鶏肉)や生魚・生野菜など加熱していない食材や、うなぎ・スッポンなどにもサルモネラ菌が潜んでいる可能性があります。食中毒にかかるかはその日の体調にもよるので、完全に避ける必要はありませんが、卵と同じくなるべく加熱して食べるのがおすすめです。

火をよく通していない加工食品

ハム・チーズなどの盛り合わせ
生ハム・チーズ・スモークサーモン・レバーパテなどの加工食品には、まれにリステリアという細菌が付着していて、そのまま食べるとリステリア症にかかるおそれがあります。リステリア症の主な症状は、発熱・筋肉痛・吐き気・下痢などです。妊娠中は特に急な発熱・筋肉痛・関節痛・頭痛・背部痛などインフルエンザのような症状が現れることがあります。妊娠中は通常より20倍も感染率が上がるとされ、赤ちゃんにも影響が及ぶ可能性があるので要注意です。
なおリステリア菌は冷蔵庫に入れていても増殖するので、長期保管は避けた方が良いでしょう。

半生の肉料理

お皿に盛り付けられたローストビーフ
ローストビーフ・ユッケ・レアのステーキ・馬刺し・鶏刺し・牛のたたきなど、加熱が不十分な肉に潜んでいる可能性があるのがトキソプラズマという寄生虫です。直接食べるだけでなく、肉を切った後に、そのまま同じ包丁やまな板を使って生で食べる野菜を切るといったことでも感染します。
なおトキソプラズマは感染しても、妊婦自身に強い症状が出ることはまれです。しかしお腹の中にいる赤ちゃんの目や脳、肝機能に障害が生じるおそれがあります。母子感染する可能性は高くはないものの、なるべく生の食材は避けるなどの予防が重要です。
もし感染の不安があれば、トキソプラズマの抗体検査が受けられるので、主治医に相談してみましょう。感染が分かっても、母子感染を防ぐ治療薬もあるので過度に心配はしなくて大丈夫です。

妊婦は特に要注意、生卵を扱うときはリスクを減らして

フライパンで卵焼く女性
昨今、スーパーなどで販売されている卵は洗浄されているので、ある程度安心して食べられます。しかし食中毒にかかる可能性はゼロとは言えません。しっかり加熱する、なるべく新鮮なものを早めに食べるなど、妊娠中はできるだけリスクを減らして食べるのがおすすめです。
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