【産婦人科医監修】妊婦もインフルエンザワクチンを接種できる?予防方法や注意点
 監修:まきレディスクリニック院長 風本真希 先生

監修:まきレディスクリニック院長 風本真希 先生

米国マサチューセッツ州ハバブソンカレッジ留学
近畿大学医学部 卒業
大阪市立大学医学部付属病院 勤務
ロイヤルベルクリニック不妊センター 勤務
パークサイド広尾レディスクリニック 院長

毎日数多くの妊婦さんの検診に立ち会い相談に乗っている。 患者さんのお話に真摯に耳を傾けることが信条。

※本記事に関する監修医へのお問い合わせはお控えください

妊婦がインフルエンザにかかったら?赤ちゃんへの影響はある?

妊娠中でもインフルエンザワクチンを接種することは可能です。妊婦は通常より病気が重症化しやすいため、おなかの赤ちゃんのためにもなるべくかからないよう予防を徹底することが大切です。この記事では妊娠中のインフルエンザの症状や予防接種について、ワクチン以外の予防方法、かかってしまった場合の対応を解説します。
妊娠中は普段よりもインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなり、重症化しやすい傾向があるので注意が必要です。重症化すると赤ちゃんへ影響を与えるおそれもあります。妊娠中のインフルエンザの症状と、おなかの赤ちゃんへの影響を解説します。

妊娠中のインフルエンザの症状

妊娠中は免疫力が低下するため、普段よりもインフルエンザにかかりやすい状態です。さらに肺炎を起こして重症化するおそれもあります。
特に妊娠後期に向かうにつれ重症化のリスクが高くなると言われています。後期にはおなかが大きくなって肺が圧迫され、呼吸がしにくくなることや、肺の血流が滞り合併症を起こしやすくなることが理由です。
<インフルエンザの主な症状>
  • 38度以上の高熱
  • 頭痛・喉の痛み
  • 関節痛・倦怠感など
上記のような症状がみられたら、インフルエンザを疑った方が良いでしょう。通常は1週間ほどで快方に向かいますが、衰弱がひどいと長引く可能性があります。治療をせずに放っておくと症状が重くなりやすいので注意が必要です。

赤ちゃんへの影響

一般的に、インフルエンザウイルス自体がおなかの中の赤ちゃんに悪影響を及ぼすことはないというのが医学的な見解です。ただし、ママの体調不良が赤ちゃんに影響を与える可能性はあります。
例えば、妊娠初期の頃に高熱が長引くと、赤ちゃんの臓器形成に影響を与える可能性があることが指摘されています。妊娠中でも赤ちゃんに影響のない薬を処方してもらえますが、まずはかからないように予防することが大切です。

妊婦でもインフルエンザの予防接種は受けられる?

予防接種を受けるマスクを着けた女性
妊娠中でも、インフルエンザの予防や重症化を抑えるにはワクチンの接種が有効とされています。妊婦がワクチンの接種が可能な理由と、接種すべき時期について紹介します。

妊婦でも予防接種は可能

インフルエンザの予防接種には、生ワクチンではなく不活化ワクチンと言う死滅した状態のウイルスが入ったものを使用するため、妊娠中に接種しても問題ありません。予防接種をすればインフルエンザに絶対にかからないわけではないものの、予防や重症化を抑えることには一定の効果が認められています。
また産まれてきた赤ちゃんは、生後半年間はインフルエンザワクチンの接種は禁止されていますが、ママが妊娠中に接種しておくことで胎盤を通して抗体を受け取れるというメリットがあります。

妊娠中のどの時期でも接種可能

インフルエンザワクチンは妊娠中のどの時期でも接種可能ですが、妊娠初期に接種するのが望ましいと言われています。ワクチンは接種から2〜3週間後に効力を発揮し、4〜5ヵ月持続します。
例年インフルエンザが流行し始めるのが12月、ピークとなるのが1月〜3月となるため、流行前の11月頃に接種しておくなど季節柄も考慮するとより効果的でしょう。
ただし、2023年はインフルエンザの流行が早まっているので、早々のワクチン接種をおすすめします。

妊婦がインフルエンザの予防接種を受ける時の注意点

医師の診察を受ける妊婦
インフルエンザワクチンを接種するかは事前に医師とよく相談し、接種後はなるべく安静に過ごすことが大切です。インフルエンザワクチンの接種を検討している人は、注意点をチェックしておきましょう。

準備:事前にかかりつけ医とよく相談する

不安や不明な点は、事前にかかりつけの産婦人科医に確認しておきましょう。特にアレルギーのある人や、以前インフルエンザワクチンを接種して体調不良を起こしたことがある人は、接種すべきか見合わすべきかよく相談しておくことが大事です。
また、ワクチンには保存剤(チメロザールなど)が含まれているものもあります。胎児や母体に影響はないとされていますが、心配な人は保存剤が含まれていないものを選べないか相談してみるのも良いでしょう。
接種することが決まったら、なるべく体に負担のかからない移動手段についても検討しておくと当日困りません。

当日:予診票を確認し、予防接種の基本事項を守る

予防接種は体調が良い時に受けるのが原則です。当日の朝に検温し、体調を確認しておきましょう。
接種に関しては、「妊婦だから」ということで特別な注意点はなく、医療機関の予診票に沿って接種を受ければ問題ありません。ワクチンとは併用できない薬もあるので、服薬中の場合はお薬手帳を忘れず持参しましょう。

接種後:できる限り安静に過ごす

予防接種後30分間は急な副反応が起こることも。すぐに医療機関から帰らず、しばらくとどまり様子をみると安心です。さらに数日間は副反応が出る可能性があるので、できるだけ安静に過ごしましょう。特に疲れるような運動は控えるべきです。家事などもなるべく家族や周囲の人に任せられるよう調整しておくことをおすすめします。
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妊婦がインフルエンザにかからないためにできること

インフルエンザワクチン以外にも、日々の生活で行える対策はあります。インフルエンザにかからないために意識したいことを紹介します。

手洗いを徹底する

洗面所で手洗いをする女性
手や体についたインフルエンザウイルスを除去するには、水や石鹸で手洗いするのが効果的です。特に外出後や食事の前は入念に洗いましょう。アルコール製剤による消毒も効果があるので、除菌剤を持ち歩くのもおすすめです。

部屋の湿度を保つ

空気が乾燥していると、気道に侵入したウイルスから体を守る機能が弱まってしまいます。乾燥が気になる部屋では加湿器などを使い、50〜60%くらいの湿度を保つのが良いとされています。

規則正しい生活を心がける

ベッドで眠る妊婦
十分な睡眠と、つわりがひどくない場合はバランスの良い食事を心がけ、体の抵抗力を高めましょう。さらに体調が良い日は、散歩に出かけるなど適度な運動を取り入れると、ストレス発散にもなり心身の健康を保てます。

なるべく人混みは避ける

インフルエンザが流行する時期は、なるべく混む場所には行かないようにすることが重要です。やむを得ない外出の場合はマスクを着用し、咳をしている人がいたら距離を取るなどの対策を行いましょう。

妊婦がインフルエンザにかかった場合の対応

薬を飲む妊婦
妊娠中でも服用できる薬があるので、異変を感じたら検査を受け、重症化させないことが大切です。最後に妊娠中にインフルエンザにかかった場合の対応を紹介します。

受診のタイミング

発熱などの症状が出始めてから、12時間後以降に病院を受診するのが基本です。ある程度ウイルス量が増えないと、検査で正しい結果が出ないことがあるのが理由です。そのため症状が出てから12〜24時間程度の適切なタイミングで検査を受けられるようにします。
なお、脱水や意識障害など体調に急激な悪化がみられたらこの限りではありません。速やかにかかりつけの産婦人科医に電話で相談し、早いタイミングで受診しましょう。
受診の際は、突然訪れると他の患者さんに感染を広げるおそれがあるため、あらかじめ電話で相談してからマスクを着けて向かうのがベストです。

治療方法

症状が現れてから48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を服薬することで、重症化やウイルスの増殖を抑えるのに十分な効果を発揮するとされています。妊婦が服用しても問題ないとされている、主な抗インフルエンザウイルス薬を紹介します。
<タミフル>
粉薬とカプセルの2種類あります、1日2回、5日間連続して服用します。
<リレンザ>
吸入タイプで、1日2回、1回につき2度の吸入を5日間連続行います。ぜんそくのある人や乳製品にアレルギーがある人には注意が必要な薬です。
<イナビル>
こちらも吸入タイプです。粉末状の薬剤40㎎を1回吸い込むだけで終了します。
また、48時間を過ぎた場合でも、解熱鎮痛薬や漢方薬などで症状を抑えられます。

妊婦はインフルエンザの予防と重症化させないことが大事

予防接種を受ける女性
妊娠中は通常よりもインフルエンザにかかりやすく、さらには重症化しやすいため、できる限り予防に努めましょう。妊娠中にできる予防法としてはインフルエンザワクチンの接種と、手洗い・生活習慣の見直しなどの対策があります。もしインフルエンザが疑われる症状が現れた場合は速やかに医師に相談し、早期に治療を受けることが大切です。
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