監修:馬場 敦志先生(宮の沢スマイルレディースクリニック院長)
理想の出産を叶えるバースプランとは?
出産に対する希望をまとめたものをバースプランと呼んでいます。まずはバースプランについて、用意するメリットとともに解説します。
バースプランとは「出産計画」のこと
バースプランとは、日本語で「出産計画」のこと。出産方法や入院時の過ごし方などに関して、ママやパパの希望をまとめたものを指します。産院とお産の計画について相談する際に、バースプランを記載した用紙を使うのが一般的です。
産院によっては専門の用紙を用意しているところもありますが、専門の用紙がない場合は、自分で紙にまとめます。バースプランは絶対に必要なものではありませんが、用意しておくと産院との話し合いがスムーズになります。
バースプランを用意するメリット
文字に書き起こすことで自分の希望や不安がはっきりとし、産院にしっかりと気持ちを伝えられるようになります。また診察では話しづらいことを伝えやすくなったり、伝え忘れを防いだりすることにも役立ちます。家族と話し合いながら作成すれば、自然とお互いの希望を確認し合うことができるでしょう。
バースプランに関して気を付けたいこと
なかにはバースプランを受け入れる体制が整っていない産院もあります。急に提出するとスタッフを戸惑わせてしまう可能性があるので、あらかじめバースプランの提出が可能か問い合わせておくのがおすすめです。
またバースプランを受け入れてくれるところであっても、すべての希望が叶うとは限りません。バースプランには自由に希望を書いても構いませんが、産院の規模や設備、出産時の状況によっては実現が難しい可能性があることを理解しておきましょう。
バースプランの具体例
バースプランはお産の項目ごとに考えると、希望がまとまりやすくなります。出産方法や陣中、分娩、入院についてバースプランの具体例を紹介します。
①出産方法
普通分娩や計画分娩など、出産方法にはさまざまなスタイルがあります。どんな方法があるのかを知り、自分の希望に近いものを考えてみましょう。なお、普通分娩以外は対応できない産院もあるので、病院を決める際にあらかじめ調べておくことが大事です。
<具体例>
- 自然な陣痛を待って経腟分娩したい
- 家族の予定に合わせて計画分娩にしたい
- 無痛分娩が希望である
- なるべく帝王切開は避けたい
- 立ち会い出産にしたい
- 水中出産について詳しく聞きたい
- 自宅で出産したい など
②陣痛中の過ごし方
陣痛が始まってもできる限りリラックスできるよう、陣痛中の過ごし方の希望や看護師さん・助産師さんにお願いしたいことについてもバースプランに書いておくと良いでしょう。
<具体例>
- 家族に付き添っていてほしい
- 赤ちゃんの状態をこまめに教えてほしい
- 陣痛促進剤は使わないでほしい
- 痛みがひどい時はマッサージをお願いしたい
- 夫に腰のさすり方をレクチャーしてほしい
- 気を紛らわせるためになるべく動き回りたい
- 人が少ない部屋で過ごしたい
- 使い慣れているクッションを持ち込みたい
- 好きな音楽をかけたり、お気に入りのアロマを炊いたりしたい など
③分娩時の対応
いよいよ赤ちゃんと対面するタイミング。貴重な時間を素敵な思い出にするために、希望はしっかりと書き留めておきましょう。
<具体例>
- 呼吸法やいきみ方を看護師さん・助産師さんにリードしてほしい
- 会陰切開はできるだけしないでほしい
- 家族に出産の様子を写真・ビデオ撮影してほしい
- リラックスできるよう好きな音楽をかけたい
- 赤ちゃんが産まれてくる瞬間を教えてほしい
- 赤ちゃんの産声を録音したい
- 赤ちゃんが生まれたらすぐに抱っこするカンガルーケアをしたい
- 出てきた胎盤を見たい など
④産後の入院中の過ごし方
産後は慌ただしくなるので、産後の入院についても余裕のあるうちに希望を伝えておくのがおすすめです。
<具体例>
- 個室を使いたい
- 赤ちゃんと同室にしてほしい
- しんどい時は赤ちゃんを預かってほしい
- 痛みがある時は積極的に薬を使ってほしい
- 母乳育児の指導をしてほしい
- ゆっくり過ごしたいので声かけは最小限にしてほしい
- 退院後の赤ちゃんのお世話について詳しく教えてほしい
- 退院後、無理してはいけないことを家族にも説明してほしい
- 産後ケアを受けたい など
産後の家事を楽にするためにも、宅配を利用してみてはいかがでしょうか。宮城・福島のコープ宅配はこちらからチェックしてみてください。
【ケース別】バースプランの書き方のポイント
妊婦さんの状況によっても希望は変わってくるものです。初産、経産、帝王切開のケース別に、バースプランを書く際のポイントと具体例を紹介します。
初産の場合
分からないことだらけの初産では、不安なことや確認したいことをしっかりと書いておきましょう。夢が膨らんで希望がたくさん出てきたらバースプランにすべて書いても問題ありませんが、状況によって必ず叶うわけではないことを理解しておく必要があります。
<初産の場合の具体例>
- お産の進み具合を逐一教えてほしい
- 今からどんな処置をするのか詳しく教えてほしい
- 入院中分からないことはいつでも聞ける環境にしてほしい
- 不安なのでできるだけ看護師さん・助産師さんにそばにいてほしい
- 母乳育児がしたいので、出産前から指導してほしい
- 出産費用は◯万円におさまるようにしたい など
経産の場合
経産の場合は、前回の出産時に良かったこと、もっとこうしたら良かったと反省したことを踏まえて希望をまとめるのがポイント。上の子のフォローについても家族としっかり話し合い、バースプランに盛り込むと安心です。
<経産の場合の具体例>
- 前回のお産で苦労したので、今回はソフロロジー法を取り入れたい
- 前回は帝王切開になったが、できれば自然分娩で産みたい
- 上の子の夏休みに入院できるように計画分娩したい
- 前回分娩室に義理の両親が入ってきたが、今回はパパだけにしてほしい
- 前回母乳の出が良くなかったので、母乳育児を無理強いしないでほしい
- 入院中は上の子も宿泊させたい など
帝王切開の場合
自然分娩を望んでいても、お医者さんの判断で帝王切開になったという例は珍しくありません。そのため、帝王切開のパターンのバースプランも考えておくと良いでしょう。帝王切開は手術にあたるため基本的に施設の方針が軸になりますが、気持ちを伝えると施設側もできる限り寄り添ってくれるはずです。
<帝王切開の場合の例>
- 立ち会い可能ならパパに立ち会ってほしい
- 不安なので手術中はこれからする処置の内容を説明してほしい
- 赤ちゃんを取り出す瞬間を教えてほしい
- 産後どこが痛むのか事前に教えてほしい
- 痛みに弱いので痛み止めを処方してほしい
- 術後の傷あとを目立たなくするケアの仕方を教えてほしい
- 費用はいくらくらいになるのか教えてほしい など
書かずに後悔!バースプランの注意点
バースプランは家族で考え、なるべく具体的に書き留めるのが後悔しないポイントです。バースプランについて先輩ママが後悔したことや注意点を紹介します。
バースプランで後悔したことって?
バースプランで多い後悔は「希望はとくにない」と思い込んで何も書かなかったことや、希望を書き忘れたこと。心残りにならないためにも、家族を交えてしっかり希望を考えることが大切です。
<書かなくて後悔した例>
- 胎盤を見たかった
- 一番初めに自分が赤ちゃんを抱っこしたかった
- 産後すぐに授乳したかった
- 希望通りに進まなかったパターンも考えておけば良かった など
注意点①パパと一緒に考える
バースプランは妊婦本人だけではなく、パパと一緒に考えることが大切。バースプランについて話し合うことは、お互いがどんなことを考えているのか知る良い機会となります。また、あらかじめパパにも希望を伝えておくことで出産に対する意識が高まり、きっと応えてくれるようになるでしょう。
注意点②具体的に書く
より理想に近づけるためには、できるだけ詳しく具体的に書くことが大切。なぜそうしたいのか理由も添えると、さらに伝わりやすくなります。ただし出産において最も優先されるのは母子の安全です。すべてが叶うわけではないことを念頭に置き、前向きにプランを見直していきましょう。
バースプランを用意し、安心して赤ちゃんを迎えよう
自分の希望を産院に伝えるために役立つバースプラン。不安なことや叶えたいことをあらかじめ産院に伝えておけば、安心して出産に臨めるでしょう。早い段階から家族も含めて話し合うことで、より理想のお産に近づけられますよ。
宮城・福島のコープ宅配はこちら
その後、北海道内の基幹病院に勤務。
2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院し現職。
日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医。
※本記事に関する医師への問い合わせはお控えください