【助産師監修】乳腺炎対策のマッサージを症状別に紹介|原因や対処方法、Q&Aも
監修:助産師 戸部 順子先生

監修:助産師 戸部 順子先生

総合病院の産婦人科で17年間にわたり、助産師看護師として生と死に寄り添う。
現在は医療現場での経験を基に、女性の健康面(生理の改善や健康面の悩み)のサポートをオンラインで行う。自分らしく、そして自分の事を後回しにしないアドバイスを行う。また、中学校で性教育講演を行っている。

マッサージをする前に!乳腺炎について知ろう

胸を押さえる白いシャツの女性
マッサージで改善が期待できるのは、母乳の滞りにより腫れや痛みを感じるうっ滞性乳腺炎です。その主な症状と原因、注意が必要な感染性乳腺炎について紹介します。

乳腺炎の種類と主な症状

乳腺炎とは、なんらかの理由で乳腺が炎症を起こした状態のことで、腫れや痛み、熱感を伴うなどの症状が現れます。原因によって、主に2種類に分けられます。
①うっ帯性乳腺炎
乳管の詰まりなどにより、乳汁が乳房の中に長く滞ることで細菌感染には至らないものの、炎症が引き起こされた状態をうっ帯性乳腺炎と言います。
<主な症状>
乳房の局所的な赤み・腫れ・しこり・圧痛・熱感・乳頭の白い詰まり
②感染性乳腺炎
うっ帯性乳腺炎のような状態が12~24時間以上改善されず、さらに症状が強まり、下記のような症状が出た場合は細菌感染が疑われるため、病院を受診しましょう。
<主な症状>
炎症部位の痛みや腫れ・38.5度以上の発熱・悪寒・インフルエンザのような身体の痛み・吐き気

乳腺炎になる原因

うっ帯性乳腺炎の原因となる母乳の滞りが起こるのは、さまざまな理由があります。例えば授乳の回数が少ない、締め付けが強い下着で乳房を圧迫している、乳管が十分に開いていないなどが原因です。
一方、化膿性乳腺炎は乳頭に傷があり、赤ちゃんの口やママの皮膚にいる常在菌や細菌が侵入することによって発症します。乳腺炎は授乳期にはいつでも起こり得ますが、産後2~3週間ごろが最も多く、産後6週間以降は落ち着く傾向があります。

【症状別】乳腺炎でつらい時におすすめのマッサージ方法

胸に手を当てる白いタンクトップの女性
乳房の張りがつらい時、乳頭が硬く赤ちゃんが母乳を吸いづらそうな時、しこりが気になる時、それぞれの症状に合ったマッサージ方法を紹介します。適切なマッサージを行い改善を目指しましょう。

乳房が張ってつらい時

まず紹介するのは、乳房がパンパンに張って痛みがある時に行いたいマッサージです。産後数日~1週間前後に起こりやすい症状です。

<行うタイミング>

  • 乳房全体がヒリヒリしてつらい時
  • 授乳直前
  • 授乳途中
<やり方>
①準備
まずは母乳の出口の準備です。始めに乳頭・乳輪を指の腹でつぶすように圧迫します。このときに親指~中指の3本の第一関節がくっつくように乳頭・乳輪を挟み、関節で圧迫するようにつぶします。
②乳房をささえる
マッサージする乳房の反対側の手の人差し指〜小指をそろえ、小指の側面をブラジャーのワイヤーが当たるラインにおいて乳房全体をささえます。
③乳房のマッサージ
マッサージ
乳房を支える
乳房マッサージ
マッサージする乳房側の手をパーにして開き、手のひらの親指のふくらみを②の手の指先の先端外側に当てて重ね、乳房を胸の板の上からはがすようにゆっくり動かします。動かす方向は脇の方から胸の中心部に向かって、脇から鎖骨と鎖骨間に向かって斜め上方に、脇から鎖骨の上に向かうように、それぞれたまった母乳を流れさせるイメージで行います。
温めると張りが強くなることがあるので、症状が出ている間は熱めのシャワーや入浴は控えた方が良いでしょう。

乳頭や乳輪が硬い時

乳頭や乳輪が硬く、赤ちゃんが吸いにくそうな時に行うマッサージを紹介します。こちらも産後数日~1週間前後に起こることが多い症状です。このマッサージは、妊娠中から準備として取り入れておくと良いでしょう。

<行うタイミング>

  • 授乳直前
<やり方>
①乳頭のマッサージ
親指~中指の3本を使い、乳頭・乳輪を第一関節部分でしっかり挟みます。10秒数えながら、乳頭の先端がゆっくりとつぶれるように圧をかけます。左右・上下と向きを変え、乳頭がほぐれるまで行いましょう。目安は3分ほどです。
②乳輪のマッサージ
乳頭のマッサージで先端が柔らかくなってきたら、乳輪と皮膚の色の境目までしっかりつぶすように圧をかけます。伸びて赤ちゃんの口に入るようなイメージで行うのがコツです。

母乳の滞りやしこりを感じる時

最後は、母乳が滞って出が悪い時、しこりを感じる時に行いたいマッサージです。出産1週間後くらいから症状を感じる人が多いようです。

<行うタイミング>

  • 授乳前
  • 授乳中
<やり方>
  • 滞りを感じ乳房に乳汁が残っている感覚がある場合
乳頭のマッサージで出口を確保し、乳房のマッサージで全体的な循環を促しましょう
  • 部分的にしこりを感じる場合
乳房マッサージと同様にブラジャーのワイヤーが当たる場所を親指の付け根の膨らみや小指側の手のひらの側面で支えて、乳房中央に向けて軽く圧をかける。決して、しこり部分をさすったり刺激しないように注意が必要です。

マッサージと合わせて、乳腺炎を悪化させないための対処法

母乳の滞りを改善するには、母乳を出やすくしてしっかり赤ちゃんに飲んでもらうことも大切です。マッサージと合わせて行いたい対処方法を紹介します。

授乳の回数は減らさない

ソファに座って授乳する女性
乳腺炎の基本的な対処法は、授乳の回数は減らさず、授乳間隔を長時間あけないことです。赤ちゃんにしっかり飲んでもらうためにも、張りや痛みを感じる方の乳房から与えるようにしましょう。赤ちゃんがなかなか飲んでくれない時、授乳で追いつかない時などは搾乳で対処します。ただし、搾乳した母乳とミルクは混ぜないようにしてください。
なお、乳房の張りやしこりが続く場合は受診が必要です。また赤ちゃんが空腹にもかかわらず、口を付けてすぐに離してしまうといったような場合も、炎症により母乳の味が変わっている可能性が考えられるため早めに受診しなくてはいけません。
軽度の乳腺炎であれば、母乳を出していると快方に向かいます。しかし授乳はできるだけ減らさないようにしつつも、体をしっかりと休めることも大切です。体調が安定するまでは、なるべく家族や地域のサポートにお願いしたい赤ちゃんのお世話や自身の身の回りのことを具体的に伝え、休息をとれるよう工夫をして乗り越えましょう。

水分補給をしっかりする

ペットボトルの水を飲む女性
授乳中は1日2Lを目標に水分摂取を行います。脱水気味になると母乳の元である血液の循環が滞り、ドロドロした状態になってしまいます。食欲がない時でも水分補給は意識して行いましょう。
水分は、できるだけ水を飲むのがおすすめです。お茶の場合は濃くないもの、カフェインが入っていないものを選びましょう。一度に吸収できるのは200mlほどなので、喉が渇く前にこまめに水分摂取を行うことが大切です。
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痛みがあるときは乳房を冷やす

授乳の前後に、ガーゼに包んだ保冷剤で乳房を気持ちいい程度に冷やすのもおすすめです。特に熱っぽさや、張り・しこりによる痛みがある場合は、症状が和らぎやすくなります。反対に温めてしまうと血行が促進して乳房の張りが強くなるので、控えた方が良いでしょう。

病院で相談する

聴診器を持った医師と患者
下記のような場合には、早めの受診がおすすめです。
<受診の目安>
  • 乳房の腫れや痛みが強く、何度授乳・搾乳しても改善しない
  • 濃い黄色や薄い黄緑のとろっとした膿のような母乳が出る
  • 38.5度以上の発熱(症状のない乳房側の肘の内側で計る)・寒気・吐き気・関節の痛みがある
  • 乳頭に白斑や水泡があり、乳房の張りやしこりが改善しない
特に症状が出てから12~24時間経っても改善しない場合は注意が必要です。自己判断で解熱鎮痛剤や抗生剤などを服用することは避け、必ず医師に相談するようにしましょう。

乳腺炎に関するQ&A

最後に、乳腺炎に関する疑問についてお答えします。間違った対処をしないよう、しっかり押さえておきましょう。

乳腺炎になりやすい食べ物があるって本当?

白いお皿に盛られたチキンとサラダ
甘いものや脂っこいものを食べすぎると乳腺炎になりやすいと言われることがありますが、特定の食べ物が乳腺炎の原因になるという医学的根拠はありません。ただし十分な母乳を作るためにも、バランスの良い食生活を心がけることは大切です。
特に授乳中に摂りたい栄養素はタンパク質・カルシウム・鉄など。脂質も赤ちゃんの成長に必要なため、極端に控えるのは厳禁です。おすすめは、干しエビや魚、葉物野菜、焼き豆腐など。また、キノコ類でビタミンDを補いましょう。生活習慣病の原因となる飽和脂肪酸が過剰にならないよう注意して取り入れてください。
ママのとる食事は母乳になって「赤ちゃんの食事」となります。また母乳を毎日何度も与えることは、毎日献血をしているような重労働とも言われるため、ママの気力や体力を維持するためにもしっかり栄養をとりましょう。同時に、たまには好きなものを食べてホッとする時間を作り、ストレスのないよう過ごすことも大事です。

病院は何科を受診すべき?

ぼやけたクリニックの内観
まずは出産した産婦人科で相談しましょう。引っ越しや里帰りなどで行くのが困難な場合は、近くの産婦人科もしくは地域の助産院・開業助産師へ相談を。夜間・休日の症状悪化時に相談ができるか、その場合どこに連絡すればよいのかまで確認しましょう。助産師のいるところでは、乳腺炎に対する適切なマッサージなども教えてもらえます。
外来のみの産婦人科クリニックは対応が難しい場合もあるので、事前に電話で症状を説明し、診てもらえるか確認しておくと安心です。

乳腺炎と乳がんのしこりの違いは?

乳腺炎と乳がんのしこりにはそれぞれ特徴がありますが、自己判断は危険です。定期的な検診と併せて気になる症状があれば病院を受診しましょう。
<乳腺炎のしこりの特徴>
  • 乳房の広範囲が硬い
  • 痛みや熱感がある
  • 赤みがある(ない場合もあり)
  • 主に授乳期に発症する
<乳がんのしこりの特徴>
  • 乳房を指で押した時に、ゴリゴリとした梅干しの種くらいのサイズのしこりを感じる
  • 皮膚にエクボのようなくぼみができる
  • 皮膚の引きつりがある

マッサージを組み合わせて乳腺炎のつらさをやわらげよう

ベッドで赤ちゃんを抱っこする女性
乳腺炎の症状がつらい時は、授乳などの基本的な対処を行いつつ、乳房の張りや硬さ、しこり、それぞれに合ったマッサージを行うことで改善が目指せます。ただし発熱やしこりが改善しないなどの症状があれば、早めに病院を受診しましょう。また体調がすぐれない時は、無理せずしっかり体を休めることも大切です。
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