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監修:八丁堀さとうクリニック副院長 佐藤 杏月 先生
安静が必要な切迫流産とは?
切迫流産とは、通常より流産の危険性が高まっている状態のこと。診断を受けたら医師の指示に従い安静に過ごしましょう。まずは、切迫流産の症状や受診の目安、安静が必要な期間を解説します。
切迫流産とは
切迫流産とは、胎児の心拍は保たれているものの、流産へと進行する可能性が高い状態を指します。症状に個人差はありますが、主な症状は少量の出血や腹痛などです。似たような症状でも妊娠22週未満は切迫流産、22〜37週未満は切迫早産と呼ばれます。もし診断されても、回復して妊娠継続できる可能性は高いので、落ち着いて医師の指示に従うことが大切です。
受診の目安
いつまでも出血がおさまらない、出血を繰り返している、出血量が多い、腹痛があるなどの症状がみられたら受診が必要です。
妊娠初期では、少量の出血がみられるケースは少なくありません。出血量が少なく、腹痛もないようであれば、翌日もしくは次回予約時の相談としても良いでしょう。
出血はなくとも、強い腹痛がある場合は注意が必要です。夜間・休日であっても、産婦人科へ連絡して早めに受診しましょう。
安静が必要な期間
切迫流産に治療法はないものの、流産のリスクを上げないためには安静にしているよう指示されます。重度ではない場合は自宅安静となり、2〜3週間くらいが目安です。家では最低限のことだけ行い、基本的には横になって過ごします。必要に応じて、出血や子宮収縮を抑える薬が処方されることもあります。
緊急性が高い場合は入院が必要です。期間は症状によって異なりますが、1ヵ月以上となる場合もあります。行動が制限されやすく、ほとんどベッドの上で過ごすケースが多いようです。
なお、どの程度の安静が必要かは症状によって異なるので、医師の指示に従うようにしましょう。
切迫流産で自宅安静となった場合にやってはいけないこと
自宅安静が必要と診断を受けたら、外出や体に負担のかかる行動はできる限り控えましょう。ここでは、切迫流産の安静期間中にやってはいけないとされることを紹介します。
外出
自宅安静を指示された場合は、外出しないのが基本です。近所への買い物もできる限り控える必要があります。外出しなければならない用事がある時は自己判断をせず、まずは主治医へ相談してください。
産婦人科の受診に向かう際は、なるべく歩くのは避けてタクシーなどを利用すると良いでしょう。この時期は赤ちゃんのことを第一に考え、慎重な行動をとるのが大切です。
力を入れる動作
重いものを持つ、屈伸を伴う動きをするなど、体に力を入れると腹圧がかかるので危険です。床に落ちているものを拾う、布団の上げ下ろしをするといった日々やってしまいがちな動作にも気を付けましょう。
排便が流産を招くことはないとされていますが、あまりにも強くいきむのは避けたいものです。便秘がちな人は、妊娠中でも飲める便秘薬を処方してもらえないか主治医に相談すると良いかもしれません。
負担のかかる家事・運動
家の中でもなるべく動き回らず、横になって過ごしましょう。料理・洗濯・掃除などの家事を控えるには、家族の助けを借りるか、家事代行サービスを利用するのがおすすめです。
また、階段の上り下りなどの動作も体に負担がかかりやすいです。基本的には避けるように言われますが、やむを得ない場合は足元に注意しながらゆっくりと動くようにしましょう。
切迫流産と診断された時の安静期間の過ごし方
安静期間中はなるべく横になってできることを見つけ、家の中での行動も最小限にとどめましょう。おすすめの過ごし方を紹介します。
買い物:ネットスーパーを活用する
日々の買い物にはネットスーパーが便利です。近所への外出程度なら許可されるケースもありますが、荷物を持って歩くと負担を感じやすいもの。お米やお水など重いものを買う時はネットスーパーにするなど、使い分けをしていきましょう。
家事:休憩をしながら疲れない程度に
家事については家族の手を借りるのがベストですが、難しい場合もあるでしょう。自分で行うとしても、最小限にとどめておくのがおすすめです。
例えば、料理は手の込んだメニューを避けてイスに座りながら行う、休憩をはさむなどすれば、疲れを軽減できます。掃除・洗濯といった毎日する必要がないものは完璧にやろうとせず、ほどほどにしておきましょう。どんな場合でも立ちっぱなしになるのは避け、動いた後はしっかりと休憩をとるのが大切です。
趣味:横になってできることを楽しむ
安静中の気晴らしには、ベッドで読書をしたり、テレビやYouTubeなどの動画を見たり、音楽を聴いたりしたという人が多いようです。小説や漫画・雑誌を読んで趣味を楽しんだり、ベビー雑誌を読んでこれからのことを調べたりと、横になってできることはあります。ただし、夢中になりすぎて疲れないよう注意が必要です。
子どもの世話:無理のない範囲でコミュニケーションを
上の子がいる人は、隣に座って絵本を読んであげるなど、無理のない範囲でコミュニケーションをとるようにするのが良いでしょう。まだ子どもが小さいうちは疲れない程度に抱っこしてあげても問題ありませんが、立った状態での抱っこはふらつきの危険があります。膝の上に乗せて抱っこするなど、なるべく安定した体勢を心がけましょう。
なお、日々の基本的なお世話は、できるだけ家族やベビーシッターの力を借りるのがおすすめです。
入浴:軽く浸かるかシャワーで済ませる
医師からの制限がなければ安静中も入浴は可能です。体も温まりリラックスできるので、適度に楽しみましょう。ただし、熱すぎるお湯に浸ったり、のぼせるほど長風呂したりするのは厳禁です。心配ならシャワーで済ませる方が無難かもしれません。
切迫流産で安静が必要な場合に仕事はどうする?
仕事も休職や時短が必要と診断を受けたら、職場に伝えて勤務を調整してもらいましょう。切迫流産で安静が必要な場合の仕事の対応、休職期間に利用できる制度を紹介します。
医師の指示に従い休職を
切迫流産で安静にと指示された場合、基本的に仕事は休みます。デスクワークであっても体には負担がかかるので、休職するのが望ましいでしょう。「職場に迷惑をかけるかも」と不安に思うかもしれませんが、赤ちゃんを守ることを最優先にするのが大切です。職場復帰の時期も自己判断はせずに、医師の許可を得てからにしましょう。
医師の診断の上、仕事を続けても問題ないということであれば普段通りで構いません。しかしなるべく負担を減らすには、在宅勤務に切り替えてもらえないか相談してみるのも良いかもしれません。
職場への伝え方
仕事を休む場合は、まずは医師の診断内容を上司に伝え、勤務の調整をお願いします。自身で説明しにくい場合や職場の理解を得づらい場合は、診断を受けた病院で「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を書いてもらうのがおすすめです。働くママのための正式な証明書類で、カードに記載された内容に基づいて事業主は適切な措置をとらなければなりません。
内容は休業だけではなく、勤務時間や時間外労働の制限、通勤時間の変更などの指導事項があります。雇用形態に関係なく効力を持つので、パートタイムでも活用できます。
休職に関連して利用できる制度
切迫流産で休職する際、条件に当てはまれば傷病手当金が受け取れます。傷病手当金とは、健康保険の加入者が労災以外の病気や怪我で休業が必要になった場合に、その間の生活を保障するための制度です。健康保険から支給され、受け取るには以下のような条件があります。
■主な条件
- 健康保険に加入して1年以上経つ
- 連続して4日以上仕事ができない
- 休みの期間は給与の支払いがない など
有給休暇の日数では足りない場合などには、条件に当てはまるかチェックしてみるのがおすすめです。
切迫流産と診断されたら医師の指示に従いなるべく安静に過ごそう
妊娠中に出血や腹痛があり切迫流産と診断を受けたら、できる限り横になって安静に過ごす必要があります。仕事や家事を休むのは不安になるかもしれませんが、赤ちゃんのことを第一に考えて体調を優先するのが大切です。どの程度安静にすべきかは症状によって異なるので、必ず医師の指示に従いましょう。
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日本医科大学武蔵小杉病院を中心に16年間産婦人科医として地域のハイリスク妊婦や、婦人科疾患の診療を行ってきた。
3人の子供の子育てと仕事の両立を目指し、整形外科医の主人とともに2020年八丁堀さとうクリニックを開業。
日本産婦人科学会専門医
医学博士
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