

監修:丸山真理子先生
妊婦はチーズを食べられる?まず知っておきたい基本知識

妊婦がチーズを食べるときは、しっかりと加熱されているか確認することが大切です。まずは妊娠中にチーズを食べる場合に知っておきたいことを解説します。
妊婦がチーズを食べるときは注意が必要
妊娠中でも、正しい知識をもって安全な種類を選べばチーズを楽しめます。基本的には、加熱殺菌された乳を使用したナチュラルチーズであれば、妊婦でも安全に食べられます。
妊婦が避けるべきは、加熱処理されていないチーズです。未加熱のチーズを妊婦が食べると、リステリア菌による食中毒や、胎児への感染を引き起こす危険性があります。妊娠中は免疫機能が低下するため、リステリア菌に感染しやすく注意が必要です。
リステリア菌はほかの感染症と異なり、胎盤を介して胎児に感染する性質があります。お母さんに症状がなくても胎盤を通じて胎児に影響することがあり、胎児感染や流産・早産につながる場合があります。間違って口にしないよう気を付けましょう。
食中毒を引き起こすリステリア菌とは
リステリア菌は、河川や土壌、動物の腸管など、自然環境の中に広く存在する細菌です。食品中に含まれることもあり、とくに長期間保存され加熱せずに食べられるナチュラルチーズや生ハム、スモークサーモンで食中毒を引き起こしやすいと言われています。
リステリア菌による食中毒は海外での症例が多く、日本での報告はほとんどないものの、平成23年に発表された食品安全委員会の評価書によると、リステリア感染症の推定患者数は年間200人とされています。
リステリア感染症の主な症状は、発熱や嘔吐、頭痛など。重症化すると敗血症や髄膜炎などにもつながります。通常、多少の菌なら発症リスクは低いですが、妊婦や高齢者は重症化しやすいので注意が必要です。
リステリア感染症の主な症状は、発熱や嘔吐、頭痛など。重症化すると敗血症や髄膜炎などにもつながります。通常、多少の菌なら発症リスクは低いですが、妊婦や高齢者は重症化しやすいので注意が必要です。
妊娠中のチーズ選びは「加熱」がポイント
リステリア菌は加熱によって死滅します。そのため製造過程でしっかりと加熱殺菌されているチーズや、十分に加熱調理(中心温度が75度以上で1分以上の加熱、全体がぐつぐつと沸騰・溶ける程度が目安)したチーズであれば、妊婦が食べても問題ありません。また、冷蔵庫内でも菌は増殖するので、開封後は早めに食べ切るようにすることも大切です。
妊婦が避けたいチーズの種類と理由
チーズはカルシウムやたんぱく質など、体に嬉しい栄養が含まれていますが、妊娠中は選び方に注意が必要です。製造・調理過程で十分に加熱殺菌されていないチーズは、妊娠中には避けた方が良いでしょう。ここでは妊娠中に避けるべきチーズの種類とその理由を紹介します。
なお、「殺菌済みの」乳を使用したチーズはリステリア菌が死滅しており、安心して妊婦でも食べられます。一方、「生乳(raw milk)使用」と明記されたものは避けるようにしましょう。
なお、「殺菌済みの」乳を使用したチーズはリステリア菌が死滅しており、安心して妊婦でも食べられます。一方、「生乳(raw milk)使用」と明記されたものは避けるようにしましょう。
ナチュラルチーズ

妊婦が避けるべきとされるのが、外国や工房で作られたナチュラルチーズです。クリームチーズやモッツァレラチーズ、カマンベールチーズ、ゴルゴンゾーラチーズなどには、ナチュラルチーズが含まれているので注意しましょう。とくに加熱殺菌していない「生乳」を原料とするものは、リステリア菌の感染リスクが高まります。
輸入品のチーズ

フランスやイタリアなど外国の一部の工房では、伝統的な製法に強いこだわりを持ってチーズ作りが行われています。中でも、「昔ながらの作り方」として尊重されているのが、生乳からチーズを作る手法です。しかし、牧場には多くの微生物が存在するため、生乳は汚染されやすく、安全性の面で注意が必要です。
市販されているチーズでも、パッケージだけでは製造工程で加熱処理されているかを判断するのは難しいため、どうしても食べたい場合は十分に加熱してから食べるか、妊婦が食べても問題ないかをメーカーに確認するようにしましょう。
国産チーズでも注意
日本国内で製造されているチーズの多くは、法令に基づいて殺菌処理された原料乳を使用して作られています。そのため、ナチュラルチーズであっても比較的安全に食べられるとされています。
しかし近年では、殺菌していない生乳を使用する工房も見られるようになりました。そのため、国産だからといってすべてが安全とは限りません。パッケージに「加熱用」と記載されているチーズは、必ず加熱してから食べるようにしましょう。
しかし近年では、殺菌していない生乳を使用する工房も見られるようになりました。そのため、国産だからといってすべてが安全とは限りません。パッケージに「加熱用」と記載されているチーズは、必ず加熱してから食べるようにしましょう。
妊婦が安心して食べられるチーズの種類一覧

製造過程で加熱殺菌されるプロセスチーズは、妊婦でも安心して楽しめます。加熱の工程でリステリア菌が死滅しているためです。プロセスチーズには下記のようなものがあります。
<プロセスチーズの例>
- スライスチーズ
- ベビーチーズ
- 6Pチーズ など
またリステリア菌は熱に弱いので、ナチュラルチーズであっても加熱調理すれば妊娠中でも食べられます。75℃で1分以上加熱するのが目安です。
妊婦さんにもおすすめのコープのチーズはこちら。
妊婦でも楽しめるチーズ料理
基本的にしっかりと加熱していれば、妊娠中でもチーズ料理を楽しめます。主食・おかず・スイーツに分けて、妊婦も安心して食べられるチーズ料理と調理のポイントを紹介します。
主食

主食系のチーズを使った料理には、ピザやチーズトースト、ドリアなどがあります。妊娠中に食べる場合は、トッピングに生ものが混ざらないように気を付けましょう。チーズ以外の食材も、生で食べると胎児に影響を及ぼす菌が付着している可能性があります。妊婦が安心して食べるには、全体にしっかりと火が通るように調理するのがポイントです。
おかず

チーズを使ったおかずには、グラタン、チーズインハンバーグなどがあります。こちらもオーブンなどでしっかりと加熱したものなら、妊婦でも楽しめます。
ただし、レストランなどで提供されるハンバーグにトッピングされているチーズは、十分に加熱されていない場合があるので注意が必要です。妊娠中は、チーズが中心部までしっかり加熱されていることが確認できない料理は避けることをおすすめします。冷凍食品を使う場合は、自然解凍は避け必ず電子レンジなどで加熱しましょう。
スイーツ

チーズスイーツの代表であるチーズケーキにはいくつかの種類があり、種類によって妊婦でも食べられるもの・避けた方が良いものがあります。
妊娠中でも問題ないのは、ベイクドチーズケーキやスフレチーズケーキです。これらは基本的に十分に加熱調理されています。バスクチーズケーキやニューヨークチーズケーキも、ベイクドチーズケーキに含まれます。
逆に、加熱せずに作るレアチーズケーキやティラミスは避けた方が無難です。
妊婦がチーズを食べる際に気を付けたいこと

妊娠中は、チーズに含まれる塩分や脂質の摂りすぎにも注意が必要です。またチーズの種類や調理法、健康状態に不安がある場合は、かかりつけの産婦人科に相談しましょう。妊婦がチーズを食べる際の注意点を紹介します。
食べ過ぎに気を付ける
チーズには、カルシウムをはじめとする妊婦に必要な栄養素が豊富に含まれていますが、一方で塩分や脂質が高めな点には注意が必要です。
例えば、プロセスチーズには100gあたり約2.8gの食塩相当量が含まれています。女性の1日の塩分摂取目安は6.5g未満とされているため、ピザなどを食べる際は数切れ程度にとどめ、食事全体のバランスを意識しましょう。
塩分や脂質を過剰に摂取したり、急激に体重が増加したりすると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高まる恐れがあります。これらは母体だけでなく、胎児の発育にも影響を及ぼす可能性があるため、日々の食生活には十分な配慮が求められます。
例えば、プロセスチーズには100gあたり約2.8gの食塩相当量が含まれています。女性の1日の塩分摂取目安は6.5g未満とされているため、ピザなどを食べる際は数切れ程度にとどめ、食事全体のバランスを意識しましょう。
塩分や脂質を過剰に摂取したり、急激に体重が増加したりすると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高まる恐れがあります。これらは母体だけでなく、胎児の発育にも影響を及ぼす可能性があるため、日々の食生活には十分な配慮が求められます。
不安な場合は相談・受診する
パッケージやメーカーのホームページを見ても妊婦が食べて大丈夫なのか判断がつかない場合は、お客さま相談室などで確認すると安心です。もしうっかりナチュラルチーズを食べてしまい不安な場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
妊婦がナチュラルチーズを口にしても、必ずしもリステリア菌に感染するわけではありません。ただし発熱や悪寒、吐き気などの体調不良が現れたら、必ず受診してください。妊娠中にリステリア菌に感染すると、無症状でも胎児にも影響が及ぶ可能性があります。
しっかり加熱したチーズなら妊婦も食べられる

チーズにはリステリア菌が含まれている可能性があり、免疫機能が低下している妊娠中は注意が必要です。基本的には十分に加熱殺菌されたチーズであれば、妊婦も問題なく食べられます。妊娠中にチーズを食べる際は、パッケージの表示や調理方法に気を付け、安全な食べ方で楽しみましょう。
「これって食べても大丈夫かな?」と迷ったときは、こども家庭庁がまとめた「妊娠中と産後の食事について」も参考になります。こうした公的な情報を知っておくと、ちょっとした不安を減らす安心材料になるでしょう。
「これって食べても大丈夫かな?」と迷ったときは、こども家庭庁がまとめた「妊娠中と産後の食事について」も参考になります。こうした公的な情報を知っておくと、ちょっとした不安を減らす安心材料になるでしょう。
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産婦人科専門医・マンモグラフィ読影認定医
日本女性財団フェムシップドクター
関西医科大学卒業、横浜市立大学産婦人科学講座・関連病院勤務を経て, 2019年EASE女性のクリニック開院
2022年 イーズファミリークリニック本八幡/イーズ病児・病後児保育室開設
2023年 第6回産前産後ケア・子育て支援学会実行委員長
2023年10月 骨盤底ケアサロンSalon de EASE開設
一般財団法人 日本女性財団フェムシップドクターとしても活動中
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