【精神科医監修】産後クライシスとは。原因と夫婦の危機を乗り越える対処法
監修:和クリニック院長 前田佳宏先生

監修:和クリニック院長 前田佳宏先生

2013年島根大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科専門外来を経験。現在は和クリニック院長。
ADHD、HSP、ASDに関連した愛着障害とトラウマの心理ケアの講演や情報発信をする。 産業医やメンタルヘルス企業の社外顧問としても活躍。

夫婦の関係が悪化する産後クライシス。辛い状態はいつまで続く?

子どもを前に喧嘩する夫婦
産後クライシスとは、出産後から数年に渡り夫婦仲が急激に悪化することをいいます。まずはその意味、期間を解説します。

産後クライシスとは

妻が出産を終えてから数年の間に、互いへの愛情が急に冷めたように感じて夫婦仲が悪化する現象を産後クライシスと言います。クライシス(crisis)は「危機」という意味の英語で、ここでは夫婦のすれ違いになどにより生じるトラブルを指します。出産後は体調や生活面にさまざまな変化が生じ、お互いに不満を溜め込みやすい状態です。産後クライシスはこのような一連の状態を指し、明確な定義があるわけではありません。

辛い時期はいつまで?

産後クライシスは、産後数年は続くと言われています。目白大学教授・小野寺敦子氏は「夫婦間の親密な感情は、子どもが生まれてから2年の間は下がるが、3年を過ぎると下がったレベルのまま安定し推移していく」と述べています。このことから産後すぐに産後クライシスが始まり、その後2年間で夫婦間の愛情が少なくなり、産後3年程度が経過した後は夫婦間の愛情のレベルが安定する傾向にあると言えるでしょう。産後2年間が夫婦関係を大きく変化させるターニングポイントです。

産後クライシスの症状とは?うつ病との違い

チェックリストに赤ペンでチェックを入れる様子
産後クライシスに陥ると、日々イライラや不満が募り、次第にお互いの愛情が冷めたように感じてしまいます。産後クライシスの主な症状と、間違われやすいうつ病との違いを紹介します。

産後クライシスの主な症状チェックリスト

以下のような症状があれば、産後クライシスを疑った方が良いかもしれません。夫婦でそれぞれ確認してみましょう。

<妻向けチェックリスト>

  • 些細なことで夫にイライラするようになった
  • 感情がうまくコントロールできず、攻撃的になってしまう
  • 夫婦の会話や一緒にいる時間が減った
  • 夫との触れ合いが苦痛に感じる
  • 夫への愛情が冷めたように感じる
  • 夫が家事・育児に非協力的に感じる

<夫向けチェックリスト>

  • 最近妻がいつもイライラしていて、家でくつろげなくなったと感じる
  • 妻と口喧嘩が絶えず、普段の会話が減った
  • 妻が子どもにかかりきりで、自分は放置されているようで不満を感じる
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うつ病との違い

出産後に発症するうつ病は、出産に伴うホルモンバランスの急激な変化や子育てへの不安から、精神的に不安定になることで陥る病気です。症状が現れるのは妻本人のみで、些細なことでイライラする、涙が出てきたりする、夜眠れない、食事が十分に取れないといった症状が続きます。
一方、産後クライシスは病名ではなく、あくまで夫婦の産後の不仲を表す言葉として世間で定着しだした通称です。心身のケアは必要ですが、医学的な診断はつかず薬の処方など治療の対象とはなりません。対象は妻のみでなく、夫婦ふたりの問題です。

夫婦が産後クライシスに陥る原因

妊娠・出産を経た妻の体で起こる変化や、夫婦の生活の変化が産後クライシスのきっかけとなります。産後クライシスに陥る主な原因を紹介します。

妻の産後に起こるホルモンバランスの変化

喧嘩中の夫婦
妊娠・出産における急激なホルモンバランスの変化は、体調だけでなく精神面にも影響を及ぼします。出産後、自分でもコントロールできないほどイライラしたり、憂鬱感や不安感が拭えなくなったりする女性は少なくありません。ホルモンバランスが妊娠前の状態に戻ると自然に改善されることもありますが、悪化すると産後うつ状態になるおそれもあります。

育児に対する夫婦の温度差

子どもを抱く女性
子育てはまだまだ妻が主体となっている家庭が多いです。妊娠〜出産を経る間に女性は子どもを受け入れる体制が整っていく傾向がありますが、夫は変化についていけていないケースも珍しくありません。産後の自分の体調に気を配りながらも24時間体制で子どもを見守る妻に対し、育児に非協力的に見える夫。この温度差がストレスの原因となります。

夫婦のコミュニケーション不足

子どもが産まれると妻は子ども優先の生活になり、以前より夫婦間のコミュニケーションは希薄になりがちです。育児に精一杯な妻を見て、夫は「自分はないがしろにされている」と感じることも。お互い不満が溜まるとどんどん会話やスキンシップが減っていき、すれ違いが解消されないまま急激な夫婦仲の悪化を招く可能性があります。

【妻向け】産後クライシスを乗り越えるための対処法

頭を抱える女性
最近イライラすることが増えたと思ったら、今の状況を冷静に見直し対処していきましょう。出産後の女性に向けた産後クライシスの対処法を紹介します。

自分の状態を客観的に捉える

イライラしてしまうのはホルモンバランスのせいで、夫のせいではないかもしれません。感情に任せず冷静になるためには「なぜイライラしたのか」をいったん紙に書き出すのがおすすめです。もし体調や精神面での不調がイライラの原因なら、夫に自分の状態を具体的に伝えると理解を得やすくなるでしょう。
産後の体力回復にママが摂りたい栄養素はこちらの記事で紹介しています。

困っていることは夫にはっきり伝える

男性は言われないとわからないことがたくさんあります。困っていることがあれば、自分の中でモヤモヤと溜め込むのではなくはっきりと言葉で伝えるようにしましょう。その際、「こうすべき」など責めるような言い方にならないように気を付け、「こうしてくれると嬉しい」と優しくリードするように伝えると受け入れてもらいやすいです。夫が協力してくれた時は、些細なことでも「あなたのおかげで助かった」と感謝を伝えるのが夫婦円満の近道です。

自分達の時間を大事にする

たまには子どもを預けて、「夫婦ふたりの時間」や「自分だけの時間」を確保するのもおすすめです。夫婦ふたりでデートを楽しめば、日頃のコミュニケーション不足の解消になるでしょう。また短時間でも自分だけのプライベートな時間を満喫できれば、気持ちがスッキリして産後クライシス脱却につながります。

夫以外の第三者に相談する

夫婦だけで解決が難しい時は、信頼できる第三者にも相談してみましょう。自分や夫の家族・仲の良い友人などに間に入ってもらうとスムーズに解決できる場合もあります。子育て経験のある人に相談すると、良き理解者になってくれるかもしれません。
身近に相談できる人がいない場合は、自治体のサービスを利用すると良いかもしれません。自治体ごとに相談窓口や支援センターを設けていて、詳細は各自治体のホームページなどで確認できます。

【夫向け】産後クライシスに直面した時にできること

子どもを抱く夫と横になる妻
夫婦関係の危機である産後クライシスは、夫の歩み寄りも大切です。産後クライシスを悪化させないために夫ができることを紹介します。

妻の状況を理解する

急に妻が変わってしまったように感じるのは、産後クライシスのせいかもしれません。以前より少しきつい言い方をされても、今は妻自身も感情のコントロールができない状態であると理解を示しましょう。大変な思いをして子どもを産んだ妻への労いの気持ちを忘れずに、居心地が悪くてもできるだけ妻に寄り添う姿勢を見せるのが大切です。今こそ懐が深く頼りがいのあるところを見せるチャンスです。

自分にできることを積極的に探す

子育てや家事は自ら率先して行い、妻がゆっくりできる時間を作ることも大事です。「手伝う」ではなく、主体的に動くのがポイントです。
育児に慣れない人は、離乳食作りなら取り組みやすいのではないでしょうか。始めは妻のアシスタントとして挑戦すると、夫婦のコミュニケーションのきっかけにもなります。自分が作ったものを子どもがおいしそうに食べてくれると喜びもひとしおですよ。

夫婦ふたりで産後クライシスを乗り越えよう

子どもを抱く夫婦
産後クライシスは、子どもを持つ夫婦みんなが直面する可能性がある問題です。妻は自分が不安定になってしまう原因を知り、夫はそんな妻を理解し支えることが大事です。夫婦で協力し合って、産後クライシスを乗り越えましょう。
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