【助産師監修】逆子体操はいつから始める?原因や効果、ポイントを解説
監修:助産師 戸部 順子先生

監修:助産師 戸部 順子先生

総合病院の産婦人科で17年間にわたり、助産師看護師として生と死に寄り添う。
現在は医療現場での経験を基に、女性の健康面(生理の改善や健康面の悩み)のサポートをオンラインで行う。自分らしく、そして自分の事を後回しにしないアドバイスを行う。また、中学校で性教育講演を行っている。

※本記事に関する監修者へのお問い合わせはお控えください

逆子とは?原因や種類、逆子体操の効果

赤ちゃんのいるお腹に手を当てるパパとママ
逆子体操とは、逆子になった赤ちゃんを元に戻すための体操のこと。リスクを踏まえながら行うことが重要です。そのためにもまずは逆子の原因や効果を見ていきましょう。

逆子の原因

そもそも逆子とは赤ちゃんの頭が下にない状態を言い、骨盤位とも呼びます。妊娠後期になると赤ちゃんの頭が重くなるので下向きになるのが一般的ですが、逆子はこのような状態になりません。逆子には母体側、胎児側それぞれの原因が考えられます。
■母体側
母体側の原因として骨盤が狭い、子宮筋腫があるなど子宮の内側の変形や双角子宮のような形の問題、羊水量が少ない、前置胎盤や低置胎盤、へその緒の状態(長くて絡んでいる、短い)などが挙げられます。低身長のママの場合は骨盤が狭いため、赤ちゃんが頭を下に向けられなくなることも。また羊水量が通常より少ないと子宮内を自由に動けないため、逆子になる原因にもなります。
■胎児側
お腹の中で動いている赤ちゃんにとって頭の位置が変わるのはよくあること。赤ちゃんの体が大きい場合や、双子、三つ子などの多胎妊娠は動き回るスペースが狭くなるため、逆子になりやすいと言われています。
その他にも、早産や羊水が多い羊水過多でぷかぷか浮いて頭が骨盤にはまることができないなどが原因として挙げられます。

逆子の種類

逆子は向きや足の位置によって分類があります。
種類 赤ちゃんの状態
単殿位(たんでんい) 胎児のお尻が下にあり、V字型の姿勢をとっている状態。逆子の8割がこの胎位です。経腟分娩も可能ですが、初産の場合はほとんどが帝王切開となります。
複殿位(ふくでんい) 胎児があぐらをかいた状態。経膣分娩も可能ですが産道を通る際、足とお尻の部分が頭より幅が大きくなってしまうため、場合によっては緊急帝王切開になります。
足位(そくい) 両足で立った姿勢(全足位)、片足で立った姿勢(不全足位)に分かれます。出産時は足から先に出てくるため、胎児に危険がおよぶ可能性があり、帝王切開での出産が一般的です。
膝位(しつい) 両膝をついた姿勢(全膝位)、片膝をついた姿勢(不全膝位)に分かれます。足位と同様の理由で、帝王切開での出産が一般的です。
横位(おうい) 胎児が横向きになっている状態。肩や手が先に出てくるため、これ以上に大きい頭は産道を通ることができず、帝王切開での出産になります。ただし出産までに頭位もしくは骨盤位に回転することがほとんどです。

逆子体操の効果

逆子体操をすることによって、逆子が治りやすくなるといった効果は科学的に証明されていません。医師や専門家で意見も分かれていますが、逆子体操を行うことで逆子が治ったという例もあります。また近年では逆子体操をしない方が頭位に戻るのに有効だったという報告もあります。
逆子体操は胎児が自分で回転できるように促す方法です。逆子と聞くと驚いたり、心配になったりするママもいるかもしれませんが、「今、赤ちゃんは無理のない姿勢で過ごしているんだ」と考え、心配せずに過ごすことが大切です。

逆子体操の時期とやり方

逆子に良い体制をとるママ
体操とはいえ、大きく体を動かす必要はありません。ママの体調を考慮しながら行いましょう。

逆子体操を始める場合は妊娠後期から

逆子体操は妊娠30週前後から妊娠35週にかけて行うのが一般的です。ただし、リスクがあるので自己判断で始めず、医師の指示が出てから行うようにしましょう。妊娠36週頃でも戻らない場合は、帝王切開となる可能性が高くなります。

やり方

◾️胸膝位(きょうしつい)
四つん這いになり、お尻を上げた状態で骨盤の位置を頭より高くする逆子体操です。
  1. 四つん這いの姿勢から、両方の手と腕を伸ばし肘を床につけて、お尻を高く上げる
  2. おでこと顔を床につける
  3. 腰が反りすぎないように注意しながらお尻を一番高くなるよう意識し、静かに呼吸する
  4. 3の姿勢のまま15分ほどキープする
  5. その後頭を上げずに、赤ちゃんの背中側を上にして横向きに寝る
※赤ちゃんの背中が右にあれば、左下にして寝る。
お腹が圧迫される時は、床に手を重ねておでこを乗せたり、頭の下にクッションを入れたりすると良いでしょう。またお腹が苦しい時は、少し膝の間を開くよう足幅をとると楽になります。横向きになる時は、上になっている膝を深く曲げて前に出すようにして(シムス位)寝るのがポイントです。
◾️側臥位(そくがい)
胎児の背中がある方を上にし、横向きに寝ます。赤ちゃんの背中が右にある場合は左側を下にし、横向きになります。
逆子体操の代わりに日々の寝る姿勢の中で、無理なく胎位の変化を期待すると医師から指示が出た場合は、意識して側臥位をとりましょう。一人でできない場合は、パートナーや家族に協力してもらい、正しい姿勢への誘導や体を支えてもらうのがおすすめです。

逆子体操のポイント

お腹の赤ちゃんに笑いかけるママ
逆子体操は、体が温まっていてリラックスしている時に行うと効果的です。逆子体操のポイントを紹介します。

体を温めてリラックスする

湯船に浸かって体が温まった後など、心身ともにリラックスした状態で逆子体操をするのがおすすめ。体が冷えていると体全体の緊張が続き、血流も悪化します。そこに逆子体操という特殊な動きをすることで、子宮の筋肉が収縮を(お腹の張り)誘発する可能性があります。
子宮の張りで子宮の壁が硬くなり、スペースが少なくなると、赤ちゃんが動きにくくなってしまうため、体を温めて子宮が緊張して硬くならないようにして行いましょう。

赤ちゃんとコミュニケーションをとりながら行う

赤ちゃんに話しかけてあげながら行うことも大切です。妊娠34週頃になると自律神経が発達して感情が出てくると言われているため、赤ちゃんが外からの声に合わせて反応することも出てきます。
赤ちゃんはいつも聴いているので、何か行う前には赤ちゃんに「〇〇するよ」など話しかけてあげましょう。逆子に関しては、「頭を下にして、ツルンと生まれて来てね」などお願いしてみると、胎動で返事をしてくれるかもしれません。
またママの恐れやストレスは緊張として見えない力を発揮し、ママ自身の自律神経を乱したり体調不良を引き起こしたりする可能性があります。仮に帝王切開が必要な出産方法だとしても、赤ちゃんとママの最善の方法になると信じて過ごし、先わずらいは避けましょう。

逆子体操の注意点

医師に相談する妊婦
逆子体操は決して自己判断で始めずに、医師の指示があってから行うことが重要です。体を激しく動かさないものの無理をせず、ママや赤ちゃんにとって心地良く正しい逆子体操を行うためにも、以下の点に注意しましょう。

無理はしない

​​医師の指示があり、指導を受けた上で逆子体操を行うことが大切です。必要な時期に必要なことを行うため、自己判断で始めてはいけません。
逆子を治したいからといって長時間行ったり、体調が悪いのに逆子体操をしたりせず、体調が良い時に無理のない範囲で1日1回を目安に行うようにしましょう。

医師と相談する

逆子体操は、必ず医師の指示が出た時にだけ行います。逆子となった可能性の原因によっては、逆子体操を避けた方が良い場合も。リスクが隠れている可能性もあるため、元気に赤ちゃんを産むことを考え、無理をしないことが大切です。
切迫早産の診断がついている、早産予防で服薬治療をしている、合併症があり治療をしている人は、基本的に行いません。逆子体操を行う場合は、医師の許可・指示が必要です。またお腹の張りがある人や性器出血がある人は行わない、腹部の痛みや、腹痛を伴う腰痛、強い腰痛があるときは中止し、医師に相談をしてください。

逆子にまつわる疑問

疑問を持つ妊婦
逆子の場合、逆子が治った目安や出産方法などさまざまな疑問が湧く人もいるでしょう。最後に逆子に関する疑問について紹介します。

治った時はわかる?

逆子が治ったことがわかるのは人それぞれ。グルンと回った瞬間がわかる人もいれば、いつの間にか治っていたと言う人もいます。赤ちゃんがお腹を蹴る位置が変わったことによって、逆子が治ったとわかる人もいるようです。

へその緒が首に巻き付いている場合はどうしたら良い?

首や体にへその緒が巻き付いているのがわかった場合、逆子体操が禁忌になることがあります。へその緒が首に巻き付いている場合、無理して逆子体操を行うと赤ちゃんが苦しくなってしまうかもしれません。
へその緒が巻き付いたことを臍帯巻絡(さいたいけんらく)と言い、首以外に手足や胴体にもおきることもあります。逆子体操はあくまでも医師の指示があった場合のみ行うようにしましょう。

治らない場合の出産方法は?

出産前までに逆子が治らない場合、経膣分娩を行う施設と帝王切開になる施設があります。現状、日本ではほとんどが帝王切開によって出産します。
■経膣分娩を行う場合
  • 赤ちゃんよりもおへそが下にある「臍帯下垂」でない
  • 前置胎盤のように胎盤の位置が問題ない
  • 妊娠36週以降で、目安の推定体重が2500g〜3500g未満
あくまでも胎児が成熟していて元気であることが重要なため、週数や体重など数字だけでは条件がクリアとなりません。また緊急帝王切開への変更となる可能性もあるため、直ぐに準備ができる施設やマンパワーも条件となります。
経膣分娩でおへそが先に出てしまったり、赤ちゃんの頭が産道の途中で引っかかったりするなど危険を伴う可能性もあるため、緊急帝王切開へ変更する同意もあります。安全に赤ちゃんを出産するためにも医師と相談した上で、出産方法を決めましょう。

逆子の時の過ごし方は?

医師の指示に従い、健康で元気な赤ちゃんを産むことを考えましょう。赤ちゃんは子宮内で居心地の良い場所にいます。逆子の多くは自然に頭が下になるもの。あまり神経質にならず、普通に過ごすのが赤ちゃんとママにとって一番です。

正しい知識を踏まえた上で逆子体操を

笑顔でお腹を触る妊婦
逆子と診断されても多くの場合、妊娠後期には自然に戻ると言われています。なかなか治らず不安に感じるママもいるかもしれませんが、赤ちゃんは理由があって今の姿勢でいます。お腹の中で一番心地が良く、おさまりが良いところにいることを覚えておいてください。逆子体操は、医師の診断や指示が出てから行うことが重要です。指示が出た時は、医師や助産師に指導を受けて正しい知識と方法で行いましょう。赤ちゃんに声をかけ、ママの体調を考慮しながら、逆子体操を行ってくださいね。
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