監修者:管理栄養士 池上 淳子
食べ物に含まれるミネラルとは
ミネラルは人間の体には欠かせない栄養素です。まずはミネラルとは何かを説明し、ミネラルの中でも人体に必要不可欠である必須ミネラルについて解説します。
五大栄養素の1つ
人間の体に必要不可欠な働きをするタンパク質・ビタミン・脂質・炭水化物・ミネラルを合わせて五大栄養素と呼びます。ミネラルはその中の1つで、地球上にある118種類の元素から水素・炭素・窒素・酸素を除いた元素の総称です。無機質と呼ばれることもあります。
健康維持に必要なものは16種類
100種類以上発見されているミネラルのうち、健康維持に必要なのは必須ミネラルと言われる16種類です。必須ミネラルは、厚生労働省が定める1日の目標摂取量によって多量ミネラルと微量ミネラルに分けられます。
1日当たりの目標摂取量 | ミネラルの種類 | |
---|---|---|
多量ミネラル | 100mg以上 | ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リン |
微量ミネラル | 100mg以下 | 鉄・亜鉛・銅・マンガン・ヨウ素・セレン・クロム・モリブデン |
その他 | 他の栄養素に含まれるため規定なし | 硫黄(たんぱく質に含まる)・塩素(食塩に含まる)・コバルト(ビタミンB12に含まる) |
ミネラルの3つの役割
ミネラルには大きく3つの役割があります。主なミネラルの働きと、当てはまるミネラルの種類を紹介します。
1. 丈夫な体に導く
カルシウム・マグネシウム・リンなどは、骨や筋肉に働きかけ、丈夫な体つくりに欠かせません。
<主な働き>
- 歯や骨を作る
- 筋肉の働きを助ける
- 体の疲労回復
- 脳の活性化
2. 体の成長や代謝を助ける
鉄・亜鉛・ヨウ素などは、体の成長を促進したり、代謝を助けたりするのに役立つと言われています。
<主な働き>
- 体の栄養・発育を促進する
- 体中に酸素を運ぶ
- 消化や代謝を助ける
- 酵素やホルモンの材料となる
3. 体内の水分バランスを調整
カリウム・ナトリウムなどは、体の水分バランスや取りすぎた塩分の調節などを行い、心身を健康に導いてくれるとされています。
<主な働き>
- 体内の水分量や体液の浸透圧の調整
- 塩分の摂りすぎの調節
- 疲労回復と精神の安定
- 心臓を正常に働かせる
必須ミネラルの働きと豊富に含む食べ物
続いては、各必須ミネラルの主な働きと豊富に含む食べ物を紹介します。それぞれのミネラルには違った働きがあるので、すべての必須ミネラルをバランス良く摂取しましょう。
多量ミネラルの働きと豊富に含む食べ物
1日100mg以上の摂取が理想とされている、5つの多量ミネラルについて、各々の働きと豊富に含まれている食べ物を以下に記載します。適度に食事に取り入れられるよう心がけていきましょう。
主な働き | 豊富に含む食べ物 | |
---|---|---|
ナトリウム | 体液のバランス調整、筋肉の収縮、神経の情報伝達 | バナナ、ドライフルーツ、豆類、ジャガイモ、野菜 |
カリウム | 体液のバランス調整、神経信号・筋肉信号の伝達 | 野菜、果物、魚、全粒製品、豆類、ジャガイモ、豚肉、牛乳 |
カルシウム | 骨・歯をつくる、血液凝固を促す、神経を安定させる | 牛乳・チーズなどの乳製品、ヨーグルト、青野菜 |
マグネシウム | 骨をつくる、筋肉の収縮、神経情報の伝達 | 牛乳、全粒シリアル製品、青野菜、ベリー類、バナナ、オレンジ |
リン | 骨をつくる、代謝を促す | チーズ、牛乳、肉、魚、ソーセージ |
微量ミネラルの働きと豊富に含む食べ物
次に1日の目標摂取量が100mg以下とされている微量ミネラルについて、主な働きと豊富に含まれている食べ物を記載します。バランスに注意して取り入れるようにしましょう。
主な働き | 豊富に含む食べ物 | |
---|---|---|
鉄 | 赤血球をつくる、全身に酸素を運ぶ | 肉、レバー、卵黄、全粒シリアル製品、オート麦フレーク |
亜鉛 | 免疫反応の調節、味覚を正常に保つ | 肉、貝、魚 |
銅 | 鉄や酵素の働きを助ける | 野菜、ピーナツ、肉 |
マンガン | 骨をつくる、代謝に関わる | 穀物、種実、野菜、抹茶 |
ヨウ素 | 基礎代謝を促す | 海藻、魚 |
セレン | 細胞を保護する | 魚、ナッツ類 |
クロム | 脂質や炭水化物の代謝を助ける | 海藻、貝、魚、乳製品 |
モリブデン | 酵素の材料になる | 乳製品、豆類、穀物、レバー |
その他の栄養素に含まれるミネラルの働きと豊富に含む食べ物
硫黄・塩素・コバルトの3つのミネラルは、単独ではなく、他の栄養素の一部になって効果を発揮します。以下に3つのミネラルの働きと、豊富に含む食べ物を記載します。食事の際に少し意識してみてください。
主な働き | 豊富に含む食べ物 | |
---|---|---|
硫黄 | 皮膚・髪・爪を作る、糖質・脂質の代謝を助ける | 豚肩ロース、鶏モモ肉、あじ、さば、納豆、乳製品 |
塩素 | 体液の浸透圧の調整 | 食塩、みそ、しょうゆ |
コバルト | ビタミンB12の構成成分として、血液をつくる | 葉菜類、肉類、臓器類 |
食べ物に含まれるミネラルを上手に摂取するには
最後に、ミネラルを効率良く摂取する方法や注意点を紹介します。ミネラルを始めとする栄養素は、毎日の食事からバランス良く摂り入れるのが望ましいです。食材の選び方や、組み合わせを考えるとさらに効率的に摂取できるでしょう。
できるだけ生鮮食品から調理する
ミネラル豊富な生鮮食品を、バランス良くメニューに加えるのが理想です。加工食品では、加工の過程でミネラルが失われやすいので、なるべく避けるか加工の度合いが低い食品を選ぶのがおすすめです。例えば、精製塩に比べると、天然塩の方がミネラルが摂りやすいと言われています。
また加工食品には、食品添加物として各種リン酸塩が含まれていることが多く、過剰摂取になりがちです。食品添加物は食品に含まれるミネラルの吸収を妨げるおそれがあり、特にリンはカルシウムの吸収を妨げると言われているので注意が必要です。
豆類や海藻類、小魚を積極的に食事に加える
豆類や海藻類・小魚類などは、ミネラルを豊富に含む食材です。積極的に普段の食事に加えれば、ミネラル不足を補えます。食事に手軽に取り入れる例を紹介します。
<例>
- おにぎりに:ちりめんじゃことおかか、だしの素と醤油を混ぜ合わる
- サラダに:砕いたアーモンドやカシューナッツをトッピングする
- ハンバーグに:タネにひじきを混ぜ込む
相性の良い栄養素と組み合わせる
ミネラルと相性の良い栄養素を一緒に摂取すると、吸収率のアップが期待できます。特にカルシウムとビタミンD、カリウム・鉄・亜鉛とビタミンCは好相性です。
反対に、吸収率を下げる相性の良くない組み合わせもあります。先述の通り、リンを多く摂取するとカルシウムが吸収されづらくなり、逆にカルシウムの摂り過ぎはリンの吸収を妨げると言われています。リンとカルシウムは、1:1の割合で摂るとバランスが良いです。また食物繊維を摂り過ぎると、マグネシウムとカルシウムを排出してしまうので要注意です。
摂りすぎに注意する
食生活だけでは不足しがちな栄養素を摂取するのに便利なサプリメント。ただし、サプリメントはあくまで食事のサポート役として考え、過剰摂取にならないよう配慮しましょう。
特に以下の4つのミネラルの摂り過ぎは、健康を害するおそれがあるので注意してください。
- ナトリウム:むくみ・口の渇きを感じる、高血圧・胃がん・食道がんなどのリスクが高まる
- マグネシウム:下痢を引き起こすことがある
- リン:カルシウムの吸収の妨げる、長期にわたると腎機能の低下を引き起こす可能性がある
- セレン:長期にわたると爪の変形や脱毛につながる
ミネラル豊富な食べ物をバランスよく摂ろう
体の健康にさまざまな影響を与えるミネラル。ぜひその働きと豊富に含まれている食べ物を知って、日々の食卓に取り入れていきましょう。ただし、取れば取るほど良いというわけではありません。1日の摂取量の目安を参考に、自分に合った取り入れ方を見つけてくださいね。
宮城・福島のコープ宅配はこちら
【著書】
最高の美をつくる朝食メソッド(ビジネス社)
美女をつくる足し算レシピ30(あたま出版)